◎花火
無風の夜に誘われて公園へ花火をしにいった。
飛び出たスパアクで地面の砂の一粒一粒に陰影をつける作業をしていると、どこからともなく青白くぼんやりと光るものがやってきて、パチパチと音を滴らせながら花火の周りを廻りはじめた。 こんなものは今時珍しくない。おそらくは、ここ数年の異常気象の賜物だろう。 しばらくは∞を描くように飛んでいたが、やがてうるさくなってきたので火花をそいつに当ててやると、キューンと物凄い音を立てて逃げていった。そいつの飛んでいく方向には、赤色や緑色をした無数の仲間達がいた。なるほど、と妙に納得した。
線香花火の赤い玉をバケツの中にポチャンと落とすと、彗星の尾っぽのように嬉しさを引きずりながら家路についた。
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